あんぱんまんの絵本を読んで感じる大人な自分
今週のお題「大人になったなと感じるとき」
さて、僕には娘さんが一人いて、彼女に絵本を読むことを毎日の日課としている。もちろん、彼女が読みたいからそうしている。
#日課と書くと無理強いしてそうじゃない。
月に一冊か二冊のペースで、ちょいちょい絵本は買い増ししている。最近、彼女はアンパンマンに夢中なので、今月はアンパンマンの原作絵本を買った。
タイトルも"あんぱんまん"と平仮名表記のレトロな絵本。色も水彩絵具のようなタッチでアニメのそれとは異なる。
さらに本の中身。全然アニメと違うやないかい!
しかし、実はこれがめちゃくちゃ面白い。
いや原作めっちゃ面白いやんけ。
先に白状しておくと、面白いというのは興味深い、素敵みたいな感じではなく、げらげら笑う感じで面白いのだ。
#ちょっとギャグ漫画みたい
#ツッコミどころ満載!
えっ、どこまで本気なんだ、やなせ先生!と思わず叫んでしまう。それが終始続く。そして、めちゃくちゃ吹き出すくらいに面白い!僕が声に出して読んでいたら、それを聞いていた妻も吹き出していた。
一方で、娘は真剣に聞いている。
真剣なまんまるまなこで聞いている。
アンパンマン好きやねん。
アンパンマン大丈夫なん?
ストーリーにドキドキして、さらにはあんぱんまんを心配をする娘に、父は胸キュンになった。
ちょっと話が逸れてしまったが、今回の話は、原作あんぱんまんを読んだときに、ちゃんと真面目に読めずに、突っ込みながら読んじゃうことで、大人になったあと感じてしまったというオチなのですが、やはり今年一番笑ったこの本を紹介せずにはいられません。
以下、ネタバレになりますが、面白かったポイントについて、ストーリを交えながら話をさせてください。
物語は砂漠で遭難した旅人(男)の描写から始まります。
砂漠で食べ物もなく、倒れ込んでいる旅人の男。ひどくお腹が空いている様子です。
衣類もぼろぼろで、痩せ細っています。
そんな絶体絶命のピンチの状況下。
彼の背景には、残酷なまでに大きい太陽が描かれています。
夕暮れで少しは暑さが緩和されたかもしれませんが、その力強さに自然の力に男は渇きを感じずにはいられなかったでしょう。
しかし彼の元に奇跡は近づいています。
確実に。
それは西日を背に飛んできました。
大きな鳥でしょうか?
いえ、違います。
あんぱんまんです。
#ちょっとスーパーマンに寄せてきているやん!
倒れ込んでいる男の横にすっと立つ八頭身?くらいある男の人。それがあんぱんまん!
#おもてたんとちゃう!
#いきなり違う
#可愛くないぞ!
彼はつぎはぎのボロボロマントを羽織っています。
そして開口一番、
「僕の顔を食べなさい。」
男は答えます。
「そんな恐ろしいことはできません。」
そりゃそうだ。
いきなり知らない人から顔を食べろと言われても。
しかしあんぱんまんはこういうやりとりには慣れっこなのでしょう。敏腕営業マンさながら続けます。
「僕はあんぱんまんだ。僕はとびきりおいしんだ。」
そうです。美味しいという主観的な価値を理由にして、少しも怯むことなく男に自分の顔を食べるように促します。
しかも自分の商品です。そりゃあ悪くいうわけがありません。
「さあ、早く」
男に考えさせる時間を与えません。
効果があったのでしょう。
男はこう答えます。
「では、ちょっとだけ。」
敏腕営業マンさながらのゴリ押しを断りきれずに、男はあんぱんまんの顔を食べますが、予想に反しておいしかったようです。
「ちょっとだけでなく、たくさん食べました。」
の説明文に、ちょっとじわりきます。
砂漠で飢えと渇きを感じているはずの男に、自らの顔を食べさせ、顔が半分になったあんばんまん。男の腹が満たされると、男を砂漠に残したまま、頑張れよーと一声かけて、飛び去るあんぱんまん。
自分の目的が達成できれば男が砂漠に男を残すこと自体に違和感は覚えないタイプのようです。
そして、その後ろ姿にありがとう、と手を振る男も男です。暑さでやられてしまったのでしょうか?一時的なあんぱんで飢えは凌ぎましたが、お礼よりも背中に乗せて帰ってもらうべきでしょうよ。
少なくともあっちに行ったら町あるぜ、くらいの情報は聞きたかったところです。
男は一時的に飢えを凌げたかもしれませんが、渇きについては満たされることなく、また砂漠に一人取り残されます。
僕はモヤモヤした気持ちを抱えながら、ページをめくります。
あんぱんまんは、顔が半分なのでどうやら少しふらついている様子です。飛んでいたのですが、森の中へと吸い込まれるように落ちていきます。
落ちた先には、ちょうちょを追いかけたまま迷子になってしまった男の子の姿がありました。泣いている男の子を見つけ、また同じように自分を食べるように伝えるあんぱんまん。
やなせたかし先生が描きたかったのは、飢えを解決するヒーローとあとがきにも書いておられました。
確かな現実大事な問題です。
ヒーロは敵を倒すだけが仕事ではないです。
飢えも解決が必要です。
しかし、先程のモヤモヤした気持ちが払拭できないので、そんな先生の言葉を届きません。
寧ろ、お金持ちとはお金を持っている人間ではなくお金の増やし方を知っている人間だ、という名台詞を思い出し、あんばんまんも小麦でも栽培して飢えを無くす方向に力をいれればいいのにとか揚げ足を取ろうとしている私は既にバイキンに心をやられてしまっているのかもしれません。
愛とか勇気とかが手垢に塗れた世の中です。
さあ、ストーリーは続きます。
ちょうちょを追いかけて迷子になっていた男の子は、あんぱんまんの顔を全部たべちゃうって、そんなことをして顔がなくなってもいいの? と問いかけます。
優しい男の子です。
自分の心配だけでなく、あんぱんまんの体を心配しています。
いやそれ以上に聡明です。
いやまじであんぱんまん、やりすぎやって。
冷静になって。
読者の声は無情にも届きません。
あんぱんには耳がないからでしょうか?
#急になぞなぞめいた
僕のことはいいんだ、たくさん食べて。
あんぱんまんは答えます。
その言葉に、ついに男の子はあんぱんまんを食べ始めます。
容赦なく。
次のページでは、まさかの顔なしあんぱんまんの姿が描かれます。何か病みつき成分が含まれているのでしょうか?
しかし、あんぱんまんにも、変化というか成長を見られます。今度はどうやら男の子をきちんと家へ連れて帰ったようです。
#先程の砂漠の件を反省したのですかね?
#顔がなくなっても学習したので、脳は顔にないことが判明
この行動から考えるにあんぱんの頭にある脳がアンパンマンの正常な行動を阻害していたのかもしれません。
男の子は無事に戻ることができだ自宅の玄関で顔なしあんぱんまんを見送ります。
顔がない状態でどうやって会話をしたのか。
男の子はなぜ遠慮なしに全部食べてしまったのか。疑問が次々に浮かびますが、説明を求めてはいけません。
無粋というものですね。
さてさて、物語は続きます。
急に天気が悪くなり、顔がなくなったあんぱんまんは、雷に打たれて煙突の中へ落ちてしまいます。
死んでしまったのでしょうか?
どうやらあんぱんまんが目覚めたら先は、パン工場のようです。
そして現れるニコニコ顔のおじさん。
パン作りのおじさんと呼ばれる彼は、みなさんご存知のジャムおじさんと思われます。
#実はジャムおじさんは人間でない
#妖精なのだ
#豆知識
顔がなくなったあんぱんまんを見て、終始微笑みかけるジャムおじさん。
#なんか、怖い
パン作りのおじさんのおかげであんぱんまんは新しい顔を手に入れます。
そして8頭身あった体は見慣れた3頭身へ。
以前よりも顔がふっくらしている、というナレーションがあったので、きっと顔が大きくなって相対的に体が小さく見えたと考えるべきなのでしょう。
いや、何も考えないのが正解でしょう。
そして復活を遂げたあんぱんまんは、いつものにこにこ笑顔。どんなに傷ついても笑顔を絶やさない彼。
少し狂気じみたものを感じてしまいました。
泣いたっていいんだよ。
心の中でつぶやきます。
届かぬ祈りに似た感情と共に最後のページをめくると、パン工場から飛びたつあんぱんまんの姿があります。そして、ジャムおじさんは彼を追いかけこう声をかけます。
「頑張らなくっちゃ、あんぱんまん」
我が耳を疑う言葉です。
#ブラック企業か!
顔を失うまで頑張ったあんぱんまんに、もっと頑張らなくちゃと追い討ちをかける一言。
こんなときには無理しなくていいんだよ、と優しく抱きしめて声をかけるべきであることは、うつが蔓延する社会では常識ですが、ジャムおじさんは妖精なので、少し考え方が違うようです。
僕は心の中でつぶやきます。
もういいんだよ。
あんぱんまん。
誰か彼を止めてくれる友達がいないとダメだ。
愛と勇気がやばい方向に拍車をかけています。
締めの言葉は、今日もどこかであんぱんまんは空を飛んでいますと言って、地球を小さく見下ろしながら飛ぶあんぱんまん。
もう惑星飛び出して地球の外も救おうとしているようです。
頑張りすぎだよ、あんぱんまん。
勇気と愛が悪い方向に働いている例かもしれません。
あっ、絵本プレゼントに考えている方は、この記事を参考にしてみてください!